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 テレビ映画を作る場合、局側が企画して制作プロダクションに発注する場合と、逆にプロダクション側が企画した作品を局に持ち込み、OKを受けて制作するケースがあり、一般的には後者の方が多く見られる。どちらの場合でも両者から担当するプロデューサーが制作に参加するが、力関係でいえば局側のプロデューサーの方が上で、実権を握っているといえよう。
 この世界、外から見ると派手で華やかのように見えるが、中に入るとその人間関係は予想以上に封建的な意識が根づいている。例えば俳優の立場についても経歴、実績などによるランク付けがされているし、プロデューサー、監督にしても同じことがいえる。ライターにしてもしかりである。さらにプロデューサーとライターの関係になるともっと複雑で、派閥的な要素が横行している。両者が一つのグループのようになっていて、Aプロデューサーと組んで番組を続けてきたライター達を、BやCプロデューサー達は使おうとしないのだ。一種のライバル意識があるのだろうか。

 このように両者がガッチリ組まれている中に新しく外から入り込むことは正直非常に難しい。もちろん抜きん出た秀作を書き、他には無いインパクトの強い個性の持ち主ならチャンスはあるかもしれない。でも、既成の番組の中に加えて貰えなければ、作品を発表する場すらないことになる。キャリアの無いライターがいきなり企画を持ち込んでも、実現する可能性はほとんど無いのだから。

 僕の場合も同じことが言えた。たまに先輩ライターの紹介で何本かの実写仕事をしたとはいえ、その世界でのネームバリューはゼロに等しい。アニメの世界で多少の実績を積んだとはいえ実写の世界では通用しないのだ。そんな僕に次つぎと企画書を依頼してくれたプロデューサーが天地プロの掘地巌氏、国際放映の駒井憲二氏はじめ数人いるが、中でも比較的実現する企画が多く、その度に僕をライター陣に加えてくれたプロデューサーがキネマ東京の新野悟氏だった。何本か一緒に仕事をしてきたが、その中の一つに〝月曜・女のサスペンス、列島縦貫シリーズ〟と〝月曜・女のサスペンス、女流作家ミステリー〟(いずれもテレビ東京、キネマ東京制作一話完結一時間枠)がある。前者はのちに「二時間サスペンスの女王」と言われるようになる片平なぎさ主演、江波杏子、水島かおりが共演した〝女・特命捜査官〟シリーズである。

 いわゆる刑事ものだが、オリジナルとなると独自の創作意欲が加わる。犯人が犯罪を犯すまでに追い込まれた人生、その手口。それを適確に追いつめていく捜査陣の推理とチームワーク。それら一つ一つを明確に組み立てていくプロセスがなんともいえない快感に繋がるのだ。使い古されていない、誰も考えたことがない手法を思いつくと密かに小躍りしたくなる。このとき書いた一本が〝横浜・夢破れた港〟だ。プレイボーイをめぐる二人の女性、その一人が新宿で殺害され捜査は三角関係のもつれに絞られるが、真相は意外な方向に発展する。脅迫状を出した容疑者として二人の男女、実はプレイボーイに娘を轢き殺された夫婦が浮上するが、真犯人はさらに他にいた。全ての状況を巧みに利用した巧緻な男が。

 オリジナルと異なり原作をシナリオ化するには制約がある。原作にはすでに作品のテーマがあり、世界が固定されている。勝手に自分の方向に変更することはできない。ではどうするか。自分の考えに共通したテーマ、消化できるテーマの作品を探し出すことからはじまる。過去に読んだ作品の中に無ければ新たにさがす。これに意外と時間がかかる場合がある。この時僕がみつけたのは夏樹静子原作の短編〝朝は女の亡骸〟(講談社文庫刊)だった。放映タイトルは〝女流作家傑作ミステリーシリーズ、疑惑の構図〝。

 夫と小学四年の一人娘と三人、幸せな家庭を築いていた主人公美保子が、ルポライターの実妹の自殺に疑問を抱き調査するな中で、その真相に迫ろうとする彼女の行動こそが彼女自らの首を締め、屈辱と不幸のどん底へ突き落とされていくことになるドラマだ。チームプレーが要求される刑事ものとは異なり、平凡な家庭の主婦の人生を掘り下げていく作業に心から打ち込めた。それにしても堀地氏も駒井氏も新野氏も今は消息すらわからず、ドラマ制作が減少する事態とともに複雑な心境だ。