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 このコラムも今回で予定回数の四分の三、60回を迎えた。“機動戦士ガンダム”を主軸に今迄関わったいろいろな作品を振り返ってきたが、さまざまな思いが甦ってくる。作品のジャンルはさまざまあり、例えどんなジャンルのものもその時その時の状況と力量の中で精いっぱい向き合ってきた。でも、時が経って改めて考え直してみると、なにか一つスッキリしなかったり果たしてあれでよかったのかと納得いかないものが残る作品がいくつか立ちはだかってくる。
 その中でもっとも納得がいかない、というかむしろ後悔の念にかられる作品がある。日本アニメーション製作の連続テレビアニメ“赤毛のアン”である。それは、ある日突然同社の中島プロデューサーからの依頼だった。“フランダースの犬”“アルプスの少女ハイジ”など、世界名作物語を一筋に手がけてきている制作会社として憧れもし、尊敬もしてきた会社でその存在はずっと以前から知っていた。しかしそれまで仕事は一度もしたことがなかったし、誰かの紹介と言う訳でもなかった。どういう経路で僕に依頼がきたのかは今でも分からないが、興味もあったし喜びもあったので素直にお受けした。

 世界名作物語については“トムソーヤの冒険”“ハックルベリーフィーンの冒険”“フランダースの犬”など子供の頃から読んでいたし、同社のテレビシリーズも何本か見ていたのでやり甲斐があると思ったのも確かだった。“赤毛のアン”についても有名な原作があるし、挑戦する良い機会だと思った。ところが中島氏に会って作業の現状、スケジュールなどを聞かされ、僕が内心一抹の不安を抱いたことも事実である。

 僕が依頼を受けた時、同番組のテレビ放映はすでに半分以上を終えていて、僕は何かの理由で番組を途中で降りたシナリオライターの補充要員だったのだ。アニメーション番組の場合、役者が演じる実写作品と違い、30分枠の作品を仕上げるまでかなりの日数がかかる。だから一般的には放映開始までにシリーズ全体の半分とまではいかないまでも、有る程度のストックを用意する期間が必要とされる。ところが“赤毛のアン”の場合、ストックにあまり余裕が無い状態でスタートしたらしい。放映に穴をあけることは絶対に許されないから打ち合わせ、執筆はもちろん、総監督の高畑薫氏はじめアニメーターを含めスタッフ全員、超ハードなスケジ
ュールの中で作業を進めなければならなかった。

 脚本陣は確か僕を含めて五人いたと思う。作業は原作をページごとに分け、割り振りされたが、その量はシチュエーションによって時に多かったり時に少なかったりと差があった。僕の一本目は文庫本のわずか3ページ余り、アンが仲間達とアーサー王物語を真似て遊ぶエピソードだった。ところが原作の中にはただ「真似て遊ぼう」というだけでその内容については詳しく触れていない。僕はアーサー王について調べようと資料になりそうな本を古本屋をはじめ探し回るのにかなり時間をかけてしまった。結果、ささやかなものがあったものの、これといった充分な資料を見つけることができなかった。しかも、約束の締め切り日まで二日弱しかなかった。正直困惑為たし、焦りもした。それ以上に自分の勉強不足をさまざまと思い知らされたことも確かだった。

 それでも、四苦八苦しながらできる限りのイメージをふくらませ、第一稿をギリギリの時間で間に合わせた。予期はしたいたものの打ち合わせでかなりの直し注文が出され、確か三稿まで作業したことを記憶している。その後、かなりの日数ガ経ち、放映されたその作品を観て正直僕は驚いた。印刷されたシナリオより内容がかなり変更され、格段に素晴らしい作品になっていたからだ。果たしてこの先僕は作業を続けられるのだろうかと不安を感じたことも確かだったが、逆に最後までなんとしても頑張ろうと図々しくも居直っていたことも事実だった。