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 体調の不調もあり、かなり長い間このコラムの執筆を休んでしまった。詳しい説明はしませんが、本当に申し訳ありませんでした。 

 さて、ガンダムに話を戻します。シリーズも半ばを過ぎた頃、僕に同じサンライズ社から新作アニメの企画が持ち込まれたのです。特撮実写とアニメによるドラマ部分を合体させたオリジナル“科学冒険隊タンサー5”でした。企画から参加する番組で、チーフライターを依頼されました。“ガンダム”との同時作業がかなりハードになることから、相談の結果以降のガンダム担当の話数を減らして貰うことにしたのです。そして、僕が平行して進めたシナリオ作業の一本目が、第25話“オデッサの激戦”でした。
 
 それは、三連星の生き残りの2機の“ドム”が仲間の仇を討たんがためにガンダムに執拗に迫るなか、オデッサ作戦開始前に裏切り者を捕らえたことから、連邦軍を勝利に導くことが出来たという話です。

 この頃になると、ジオン軍はもちろん連邦軍共に犠牲者の数も増え、戦いも激化するばかりだった。疑心暗鬼が交錯し、裏切りが横行するのです。それは犠牲を可能な限り少なく押さえ勝利への道を急ごうとする軍上層部の焦りが働くからとも言えるでしょう。しかし連邦軍の兵士エルランの裏切りを予定して攻撃力を薄くしていたマクベ軍の作戦は失敗に終わり、果ては南極条約で使用を禁止されている最終兵器“水素爆弾”を使うところまでエスカレートする。結果的にはガンダムのビームサーベルの前に切り落とされるが。

 このように疑心暗鬼や裏切り、思い込みといった人間の心理は、冷静な判断力を欠く結果に結びつく。戦争という状況下だけではない。日常の人間関係の中でも多く見られる。ただそれらが“戦場”という特殊で過激な空間の中ではよりエスカレートし、より狂気じみていくといえるだろう・そういう意味から見ると“ガンダム”は戦争ドラマであると共に日常生活の延長でもあるということが出来ないだろうか。げんに、恨みや疑心暗鬼、裏切り、嫉妬心がエスカレートして狂気的な殺人事件を引き起こす例は日常でも多く見受ける。人間は生身である。自分で自分をコントロール出来る人もいれば、そうでない人も多い。どちらが正しくどちらが間違っているかという問題ではない。人間関係とはそれだけ難しいものということだ。

 戦場ではさまざまな作戦が交錯する。相手を欺くための作戦、虚を突いて急襲をかける作戦、秘密裏に開発していた新兵器を使う作戦などなど。それらはどれも人間の心理の盲点を巧みについた計算が根底になっている。心理と心理の駆け引きだ。しかし、だからこそ成功することもあれば、失敗することもある。“オデッサの激戦”では、マ・クベの作戦が失敗に終わる結果になった。彼は二重スパイのジュダックをフルに活用し、東欧戦線の連邦軍の兵士エルラン中将を通じてその動きを操っていたのだ。しかし、Gアーマーで訓練を兼ねた偵察に出ていたアムロとセイラに連邦軍の小型機ドラゴンフライで飛び立ち、不審な行動をとるエルラン中将を目撃され、ジュダックとエルランの内通が発覚することになる。これが、その事を知らないマ・クベの次の作戦が失敗することに繋がるのだ。

 スパイの存在は相手側の情報を掴むことにある。誰をいかにしてスパイに仕立てるか。スパイとして使う人間の弱点を利用するか。その人間の望む有効な条件を利用するか。いずれにしろ強力な交換条件が必要となる。しかしスパイも人間である。いつ裏切るかもしれないし、実は二重スパイであったりする。エルランの場合は裏切ったわけではなく、本人の知らぬ間に発覚してしまったわけである。

 心理的な駆け引き、思惑の交錯。意思の伝わり方の食い違いから人間関係にヒビが入るし、衝突も起こる。この回の一つのテーマでもある。