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 話は少し遡るが、“コメットさん”(ТBS、国際放映)という番組に出会ったことがある。かなり昔、当時のアイドル歌手だった九重由美子さんの主演で連続テレビ映画になったもので、僕が関わった今回は大場久美子さんが主役のコメットさんを演じた。30分枠一話完結連続形式のシリーズで、確か2クール(1クール13話、26話)続いた番組だったと思う。
 ある惑星から人生修業のために地球に送られて来た少女コメットさんが地球の子供たちと出会い、さまざまな悩みや問題、事件を解決しながら成長していくというストーリー。その解決方法がコメットさんの得意技である魔法を使うという、ラストのクライマックス・シーンとなっている。このシチュエーションは、やはり「テクマクマヤコン」と魔法を使って解決する“ひみつのアッコちゃん”や、僕も脚本に参加した“魔法のマコちゃん”、“魔法のアイドル・パステルユーミ”などと同系列の少女ものである。

 ただひとつ大きく異なっていたのは、アニメーションではなく特撮を使った実写版だったこと。どんな魔法を使って解決すればいいのか、毎回頭を悩ませたのは正直事実だった。画で表現するアニメーションの場合はどんな表現も自由で可能だ。例えばアッコちゃんが大将の愛犬ドラに変身することも出来るし、人間以外の何にでも変身することが許される。けど人間が演じる場合はそうはいかない。いくら特撮技術が進んでいるとはいえ、映像的にもシチュエーションからも、観る者を納得させる説得力がなければ成り立たない。

 この番組のライター陣は確か7〜8人いた。わりと新人、若手が多く、この世界に比較的遅く足を踏み入れた僕は、年齢を確かめたわけではないがおそらく最年長だったかもしれない。その僕には、実は一つの特技?がある。マジックだ。小学生の頃に近くのお祭りで見た実演販売のマジックに魅せられ、それからというものお年玉から小遣いまで全てがマジックのタネに変身するというハマリ方だった。独学で身に付けたマジックの世界を、何とかこの番組に活かしたいと意気込んだ。結果、今迄考えたこともなかったとんでもない思い違いに気付かされたのだ。マジックは、確かに人を驚かせ楽しませるかもしれない。でもそれは、巧妙にタネを操り人の目を欺く錯覚の世界の現象だということ。改めて考えると当たり前のことかもしれない。しかし、勝手にマジックに酔いしれていた僕は、恥ずかしいかなそのことに気付かなかった。人の心の悩み、苦しみ、怒りを掘り下げて描くドラマの中で考えてはならない偽りだったということ。この番組の中で僕が使用したいくつかの魔法を残念ながら明確に覚えていないが、反省の中で悪戦苦闘したことは記憶に残っている。そして、以降のシナリオの作業により真剣に取り組まなければと思い知らされたことも。

 裏話になるが、当時NHKを除いた民間放送会社には業界としてのランク付けがあった。“ドラマのТBS”と称されたТBSがトップ。次いで日本テレビ、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京の順。だからシナリオライターは皆、ТBSのドラマ番組を書く事を憧れとしていた。“コメットさん”は子供番組とはいえ、そのТBSの番組。その前から数多くの企画書でご一緒させて貰った国際放映のプロデューサー神谷氏が、僕を紹介してくれたのだ。創設の早いТBSの番組には多くの大先輩、大ベテランのライター陣が活躍している。そしてプロデューサー陣も優れた人材が沢山犇めいている。新人ライターの中から逸脱した才能を認められて引き抜かれた人も居たが、鋭く厳しい作業のまに耐えかねて自ら命を絶ったという話を聞いたことがある。どの業界、どんな仕事についても言えることだが、真を極める道は遠く厳しいものと改めて思い知らされる。