meijido_logo2b.png

title_column_araki.png

0032

 “ガンダム”の作業が半ば近くに差しかかった頃、僕は同じ製作会社サンライズ社のプロデューサーから新しい番組の企画を依頼された。SFロボット・アクションものである。実写の世界では何本も企画書を依頼されて書いてきたが、実現した経験は無く、ただ一本だけドラマ化されたが(井上ひさし原作“青葉繁れる”)、脚本は全く別のライターだった。だから、スポンサー(クローバー社)も決まっていて、実現を前提にした今回のようなケースは初めてだったので、力が入ったことは言うまでも無い、

 総監督は“ガンダム”と同じ富野喜幸氏、メカデザインも“ガンダム”と同じ大河原邦男氏だったが、この話しを持ち込まれた時、僕は何の準備も無かったし、もちろん構想も無かった。しかし番組を作るからには面白く楽しい作品にしたいのは当然で、僕はいろいろ思いを巡らせた。まず考えたことは“ガンダム”が壮大なスケールのシリアスなドラマであったことから同系統なものではなく、逆に理屈抜きに楽しめる、超娯楽エンターテイメントな作品にしたらどうだろうかということだった。

 そこで思いあたったのが“007・ジェームスボンド”シリーズである。この映画は理屈抜きに好きで、その後も一本も欠かさず観ることになる。僕はこのシリーズのようなスカッと爽快な作品をいつか書いてみたいと考えていた。以前、時代劇の世界に置き換えて実現できないものかと企画を練り、企画書に仕上げてあるプロデューサーに持ち込んだことがあった。荒唐無稽な発想で面白いといわれたが、予算的に撮影が無理とあっけなく拒否された。そう、予算。現実的な問題で日本のテレビ界では無理な企画なのだと実感させられた。それが再び僕の中で甦ったのだ。そうだ作画で表現するアニメの世界なら実現できるだろう。

 こうして誕生したのが“無敵鋼人ダイターン・3”だった。富野氏、大河原氏らと何度も企画内容を練り直し、サンプルストーリーを添えて企画書に仕上げることができた。大河原氏は自ら手作りの木製変型ロボットのサンプルを携え、スポンサーであるクローバー社の担当者達を前に何度もなんどもプレゼンテーションを繰り返しての結果だった。正直、僕は飛び上がらんばかりに嬉しかった。

 この企画ではもう一つ今迄の作品、ロボットものと意識的変えたことがある。全体の構成、ストーリー展開である。多くの場合、いや殆どの場合がスタートの段階、第一話、二話でドラマの背景、世界観が説明される。それを理解させた上で物語を進行させていく。“ダイターン・3”ではそれをガラッと変えるように僕が提案した。背景の説明から入ったのではまだるっこしいからが理由。何かよく分からないままスタートし、回を重ねるごとに引き込まれ、主人公の生い立ち、ドラマの背景はシリーズのラストで明かすというストーリー展開にした。

 そこで僕が担当した脚本は第一話とラスト二本(前後編)にウエイトを置くことになった。もちろん進行する中で何本かの脚本は担当した。30分枠一話完結形式にしたこともその為だった。僕が前から
書きたかった“007”シリーズの世界は、まず第一話からふんだんに取り入れた。まさに“ジェームス・ボンド”シリーズのパロディーそのものともいえるだろう。実はこの作品を企画から担当したことから、それ以降僕は“ガンダム”の担当脚本の本数を減らしてもらうことになった。“ダイターン・3”の
シナリオ・ライターは数人いたが、全体の進行に携わる立場にあったからだ。しかしこのシリーズに関わったことで予想以上に充実した時期であったことも確かである。“ダイターン・3”の思い出はまだ続く。