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 僕が、東京ムービー社の製作するテレビアニメーションでシナリオに参加した作品はいろいろあるが、中でも強く印象に残っているものの一つに“新・ルパン三世”がある。その理由は、他ではちょっと見られないほどの充実したスタッフ構成にあった。この番組の担当プロデューサーは飯岡という若い人で、“はじめ人間ギャートルズ”以来の知人プロデューサー小野田君が僕を紹介してくれたのだが、自作のプロット2、3本を携えて初めて参加した製作会議で、僕は驚きを隠せなかった。

 一般に、テレビアニメーション作品の製作会議といえば、テレビ局の担当プロデューサーに製作会社の担当プロデューサー、チーフディレクターにシナリオライターという構成が普通である。それが、“新・ルパン三世”の場合、シナリオライターだけで十数人もいるのだ。それより驚いたのが、大物映画監督の鈴木清順氏とベテランのシナリオライター大和屋竺氏が監修者として参加していたことだ。日活で会社の方針に異議を唱えて多くの異色作を世に問うた鈴木清順監督。石堂淑朗監督らと同期の異端児的ライターの大和屋竺。この二人の英才が“新・ルパン三世”の屋台骨をしっかり支えていたわけだ。同作品が大人気の長寿番組たりうるヒミツが大いに頷けた。

 当時僕は“機動戦士ガンダム”の仕事にも携わっていたこともあり、“新・ルパン三世”のシナリオは三本ほど書かせて頂いたが、中でも一番気に入っているのが“二人五右衛門・斬鉄剣の謎”だ。いうまでもなくルパン三世はモンキーパンチ氏のオリジナル・キャラクターであり人気沸騰の漫画であるが、テレビ化されたシリーズは、シナリオライター達のオリジナルである。ルパン三世以下五右衛門、不二子、銭形警部らの設定されたキャラクターを十二分に活かし、原作に負けないストーリーを考え、構築して持ち寄るのだ。そして、プロットでシナリオ化のOKが出た時、作品への意気込みが盛り上がることになる。

 僕は、今迄にない、奇想天外なストーリーを組み立てられないか、時間をかけていろいろ考えた。なにしろ
“ルパン三世”は英知に長けた天才的な盗みのプロだ。狙う財宝、盗みの手口、どれも既にありとあらゆる手法が使われている。凡人の僕にはなかなか斬新なアイデアが思いつかない。そこで辿り着いたのが、ルパンではなく他のキャラクターを主人公にしてみたらどうなるかという着想だ。

 これも、手を変え品を替えてこねくり回した揚げ句に思いついたのが五右衛門だった。“ルパン”シリーズは正面から構えたシリアスな作品ではない。奇想天外なストーリー展開による徹底したエンターテイメントだ。僕としては今迄と違うストーリー作りに、一本の作品に正直力尽きるほどの時間と労力をかけたように思う。こうして完成したのが“二人五右衛門・斬鉄剣の謎”だった。

 ある日を境に、街のあらゆる銀行が次々襲われる事件が起きた。厳重な金庫がなんなく破られる手口から、これは斬鉄剣による仕業しかないと、五右衛門が銭形以下の包囲網に迫られる。しかし、全く身に覚えの無い五右衛門は、自らの手で犯人を突き止めると、追っ手をかい潜って奔走する。このストーリーの着眼は、実は斬鉄剣は大小二振りからなる“夫婦剣”だったという、今迄に無い、しかし僕の独断と勝手な設定からのもの。その上、この二振りは20年に一度添え寝をさせないと大惨事が起きるというおまけつきの設定にした。ただ、書き上げたシナリオの中では「大惨事がおきる」とセリフでいうだけだったので、「どんな大惨事か画で見せないと迫力がない」と鈴木清順氏から鋭い指摘をうけた。僕は考えた末、ストーリーの流れを妨げないよう、大惨事をイメージフラッシュで表現した。シナリオは無事OKが出た。爽快感あふれるエンドだった。