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 4人のライターがそれぞれに書いたシナリオを持ち寄っての第2回の会議。実はかなり難航した。企画から参加して第一話を担当した故星山君は、すでに富野さんとは数回に渡って意見調整、打ち合わせを積み重ねているから別として、僕を含めた残りの3人は初めてのシナリオ化である、企画書にもとずきドラマの背景、登場人物像をイメージして書き上げたものの、人物像の受け取り方、セリフの言い回し、表現のニュアンスなど微妙に違うところがあった。もちろん、お互いプロの作業だから基本的な部分での違いはなかった。

 最も顕著なのは、ライター自身の性格や持ち味によってその人のカラーが出てしまうこと。4人の中でもアニメのライターとしてキャリアのある山本君は、風刺を込めたユーモアのある作風が特徴だ。第4話を担当した松崎君は年齢も一番若く、シナリオライターとしての経験も浅いが、アニメ業界では知る人ぞしるスタジオぬえの社長であり、キャラクターデザインを手がける一方、SF科学に関する知識の豊富さでは引けを取らない存在だ。そこを買われてのガンダム参加といえよう

 虫プロの文芸部で経験を積んできた故星山君は純粋なアニメのライターとして、パンチの利いたギャグものからシリアスものまで幅広い味の持ち主だった。生前彼が語ったことがある。「手塚治虫先生はシナリオというものを必要とせず、いきなりコンテから作業に入っていた。だから僕はアニメのシナリオがどんなものか知らずに自己流でやってきた」と。実際、アニメ作品の歴史を見ると、シナリオという工程を通らず原作や作者の発想から直接絵コンテを作成するのがパターンだったといえる。さらに故星山君は「僕はアニメ界の山田太一をめざしている」と、将来の夢を語っていた。惜しい逸材は早く逝くものなのだろうか。

 アニメ製作会社のスタッフは若い人たちが多い。アニメーターはもちろんライター、プロデユーサーなど製作スタッフもほとんどが劇画や漫画で育った世代だ。実写の世界から入って来た僕は、アニメのシナリオも全く同じ型で書いている。最もアニメ用のシナリオというものがあるのかないのかは、特に問題のないことかもしれない。僕はシリアスでオーソドックスな作品がすきで、ギャグやコミカルなものはどちらかというと苦手だ。“ギャートルズ“も“ひみつのアッコちゃん“も、シリアスなタッチでかいてきた。

 このように、性格もキャラクターも異なる4人のライターが、1本の作品を回転させていくのだ。第一作目からスムーズにフィットするとは言えないだろう。でも反対に、異なる4人の味が上手く混ざり合うことが出来れば層の厚い、面白く深みのある作品になることもあるのだ。これを統括するのが、CDの富野さんの立場である。加えて、1話ずつ変わる担当監督の個性、持ち味も活かしながら、展開していくのだ。そして富野さんの世界、“富野ワールド”が構築されることになる。

 会議は、アムロ以下主要登場人物の描き方やセリフのニュアンスの微調整、メカの取り扱い方等の意見交換を重ねて、第1話から第4話までの直す点を確認しあい、次回の打ち合わせ日程を決めて終了した。

 上井草の駅周辺には安くてうまい店がいろいろある。あいにくその日、富野さんは予定があるとのことで参加できなかったが、僕たちライター4人は近くの居酒屋で一杯やることになり、作品の成功のためにもチームワークを密にとっていこうと約束して乾杯した。